ライフラフトはお飾りか?

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乗っている船が沈没間違いなしとなった時、乗り移るためのゴムボートがライフラフトだ。ところが、ヨット乗りの中にはキャビンの中でライフラフトを開けば船は沈まず、そのまま救助を待っていればいいなどというデタラメを信じている人がいて驚かされる。事実はそれとは正反対で、ライフラフトを使って生き残ろうとすれば乗り込む人たちの勇気と決断、それに知識が必要となると断言できる。

4年前、太平洋横断航海に出航したものの事故で沈んだヨットからライフラフトに乗り移って生還した実例から、そのことを学んでいきたいと思う。(写真は藤倉ゴム社製5人乗りライフラフトで、日本で作られているものとしては最小クラスのもの)


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3月30日、読売テレビ系列で「体感!奇跡のリアルタイム 九死に一生! 辛坊治郎ヨット遭難の全真相」が放送された。2013年6月に太平洋横断航海に出航した辛坊氏と全盲のセーラー岩本氏が乗ったヨットが、出航5日後に遭難し救助された一部始終を伝える番組だった。

 

ヨットに乗る者として、こうした海難事故がテレビで放送される機会は大変珍しいので、どう扱われるのか関心があり録画して詳細に検討した。2人が乗ったヨット、エオラスにはキャビン内に2台、コックピットに2台のカメラが取り付けられ、自動的にずっと録画するシステムになっていた。番組ではその映像を使いながら、遭難した原因と救出の顚末を詳しく伝えてくれた。読売テレビ、辛坊氏と岩本氏には貴重な映像と証言を公開していただいたことに感謝し、今後の海難事故防止に役立つようこのブログで紹介させていただきたい。

 

一般の人向けの放送だったため、外洋での遭難から救出された感動物語という面が強調されていた。このため海難事故が起きてしまった場合、どうやって生き残るかについてのスキルについてはくわしく触れられてはいなかった。しかしヨットに乗る者の目から映像を詳細に見ていくと、かなり重要なことが映像の中に含まれていることに気が付いた。その中で最も重要なことは、ライフラフトの正しい使い方についての知識がないと、生還できる可能性が低くなるということだ。


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4年前の6月16日、福島県を出航したヨット・エオラスは順調な航海を続けていたが、5日後1200キロ沖合を航海中に事故が発生した。

事故後まもなくして原因はクジラとの衝突だったと発表され、新聞紙上で映像が公開されたもののよくわからなかった。今回の放送ではこうしてクジラの背中がハッキリ見えた。


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映像と同時にキャビン内の音や会話も収録されていて、午前7時8分にクジラが衝突した時の様子もわかった。ドーン、ドン、ドンと3回音がして映像がその都度振動した。寝ていた辛坊氏と岩本氏は気が付いて目を覚ましたが、辛坊氏が大きな波がハルを叩いたのだろうと岩本氏に話しかけ、2人ともそのまま休んでいた。

キャビンに水が浸水しているのに最初に気が付いたのは岩本氏で、音がしてから17分後だった。全盲の岩本氏は聴覚が鋭く、早めに気が付いたのだろうというコメントだった。浸水はそれくらい静かでじわじわと海水が入りこみ、気が付いたらキャビンの床上まで来ていたということらしい。岩本氏はすぐに辛坊氏に声をかけて起こした。

 

映像で見るとその時点で水が床上20センチくらいまで入っているように見えた。辛坊氏が「ビルジまわして」と言ったりしているのが聞こえたから、ビルジモーターのスイッチを入れて排水を始めたのだろう。このヨットにはビルジ排水が手動ポンプと電動ポンプでできるようになっていたとのコメントがあったが、手動ポンプを使っている映像はなかった。手動ポンプのハンドルは、たいていのヨットはコックピットにあるので、カメラの死角に入っていたのかもしれない。

 

事故発生から24分後、辛坊氏が衛星携帯電話で航海支援事務局のH氏へ電話し「右舷衝突で浸水、排水できる量ではない。沈没間違いない。エンジンマウントまで水が来ている。ビルジが追いつかない」と伝えた。緯度と経度でポジションを伝えたあと「艇体放棄になりますね。ライフラフトは要するに放り投げたらいいんですね。使ったことないからわからない」と話した。そのあとH氏の返答を聞きながら、「ふん、ふん、ふん、了解しました」と話したので、何らかのアドバイスを受けたらしい。




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コメントでは7時41分にH氏が海上保安部へ救助要請したとされていたから、H氏との電話を切ったあと2人は手動のビルジポンプも駆使して排水作業を続けていたのだろうか。それともすぐにライフラフトの所へ辛坊氏が行ったのか、映像からではわからなかった。

 

私がメルボルン大阪レースの時にライフラフト講習会などで聞いた話しでは、まず船が沈まないように最大限の努力を最後まで行うべきだということだった。その努力の甲斐もなくいよいよ船が沈むのが間違いなしとなった時、ライフラフトへ乗り移ることを決断せよと言われた。ライフラフトはあくまでも緊急用の小さなゴムボートであり、船にくらべれば不安定な乗り物にすぎないから、というのがその理由だった。


 

放送の映像を見た限りでは、船底の浸水箇所を突き止めようとしている映像はなかった。2人にとっては浸水のスピードがとても速く感じられ、ヨットがすぐに沈んでしまうと焦ったようだ。このためにライフラフトを一刻も早く開かなければならないと思ってしまい、最初にしなければいけなかったエオラスの船足を止めることをしなかった。まずジブとメインを降ろして船足を止めるべきだった。船底に開いた穴かクラックをできれば確認し、できなければ浸水の量と速さからヨットが沈むとしたらあとどれくらいの時間が残されているのかを推測し、優先順位を決めて次のことに対処しなければならない場面だ。

 


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さらにドッグハウス上のライフラフトが入った白いコンテナの所へ行った辛坊氏は大きな間違いをした。コンテナは上下に別れる二つの箱型ケースからできているが、ふだんは開かないよう紐がかけてある。辛坊氏はこの紐をナイフで切り、コンテナを手でこじ開けたのだ。ところがこの紐はライフラフトが膨らんでいく途中で切れる程度の強さのものが使われており、ナイフで切る必要はなかった。また、袋に入ったライフラフトをコンテナから人が引っ張り出す必要もないのだ。


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この写真は以前自分のライフラフトの定期検査の時に撮ったもので、検査員が実際にロープを引いて気室に内臓ボンベのCO2を注入しようとしている。

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CO2が入り始めライフラフトの気室が膨らむことにより、ご覧のようにコンテナは自然に上下に別れて開く。この時に紐は勝手に切れて行った。


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1分もすると、こうしてほとんど開き終わった。この藤倉ゴム製5人乗りライフラフトを海上で開くと、ヨットと繋がった舫い綱にコンテナの上側ケースとライフラフトを包んでいた黄色い袋がぶら下がることになる。後で触れるが、この黄色い袋には乗り移ってからすぐに必要になるかもしれないものが取り付けてある。


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エオラスでは船足を止めないままデッキ上で赤いロープを引いてしまった。ライフラフトは急速に気室が膨張するからその勢いでライフラインを乗り越えて海上に落ちたのではないだろうか。その際ヨットがまだ走り続けていたのと、ライフラフトの舫い綱である白いロープをクリートなどに固縛していなかったためにライフラフトはすぐに船尾へ向かって流れ始めた。


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辛坊氏が必死で白いロープをつかみ、コックピットに転び落ちながらも手からロープを離さず、何とかクリートできたらしく流出は免れた。いったんライフラフトが船から離れてしまうと、申し訳程度のシーアンカーが海中で開きはするもののたいして効果がないから、風と波の影響でどんどん遠ざかっていくだろう。そうなったら浸水して重くなったエオラスで追いかけることはかなり難しかっただろう。

番組によると衝突から50分後の午前8時1分に2人がライフラフトに乗り移ったとのことだった。この時、GPSと衛星携帯電話をヨットから持ち出したことが早期の救出に繫がった。しかし、ヨットにはイパーブも搭載されていたはずで、コメントはそれについては触れていなかった。イパーブをライフラフトに持ち込みスイッチを入れて救難信号を発信し続けていたら、救助に来る航空機や船舶にとっては発見しやすかっただろう。イパーブは衛星への電波だけではなく、近くまで来た救助者に対するホーミング電波も発信するから、自分の位置をより正確に知らせることができる。これまでの遭難事故から救出された人たちが書いたものによると、近くまで飛行機や船が来てもなかなか見つけてもらえなかったり、気が付かずに行ってしまったという例がけっこうある。ライフラフトからは飛行機や船が大きく見えるが、逆の視線からは大海原に浮かぶ点に過ぎないからだろう。


 

海外の外洋ヨットレースでは、急速にヨットが沈みイパーブを持ち出せない場合に備えて、ライフラフト内に別のイパーブをあらかじめ入れておくことが義務付けられる場合もある。イパーブが小型化しているのと、日本とは違って簡単に登録、使用できることがその理由だ。


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ライフラフトの底には艤装品が収納された袋が固縛されている。ライフラフトが屋根の部分を下にして逆さまに開いてしまうことがあるため、海に落ちないよう固縛されているのだ。その場合には海に入り、ラフト底にある復元用ロープをつかんで足を気室の縁にかけ、引き起こしてやらなければならない。この作業をすれば、もちろんずぶ濡れとなる。


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袋の中にはこれらの艤装品が入っている。やはり普段はコンテナ内に密封されているので見ることができず、定期検査時に検査場まで行って撮った写真だ。オレンジ色の円筒形の物には医薬品や包帯などが、その右の長方形の箱にはビスケット、黄色い櫂の右にあるのは火せんや信号紅炎が入った箱。

白い舫い綱と、気室にCO2を急速注入するために引く赤いロープの右にある透明な円筒は飲料水(今は別の容器に変わった)、その下の黄色いものがアカ汲みとスポンジ、手前の長方形で少し銀紙が見えているのが保温のために被るものだ。さらに左下角に見えるのが組み立て式レーダーリフレクターである。艤装品はここに見えているものがすべてではなく、SOSを点滅信号として発進できる小型ライトなどもある。


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中型以上のライフラフトでは、気室が膨らむと同時に屋根の部分も立ち上がるようになっているものが普通だが、藤倉ゴム製5人用のものは艤装品袋からアルミ製の棒2本を取り出して繋ぎ、屋根の柱として立てなければならない。平穏な海ならたいして難しい作業ではないが、波が高い時は座ったまま慎重にしないとライフラフトが転覆する可能性がある。もし艤装品袋を開けたままで転覆したら、貴重な水や食料などを海へ流失させてしまう。実際にそんな事態になったのが、1991年グアムレースで起こったヨット「たか」の遭難事故だ。ようやく6人がライフラフトに乗り移れたのに水と食糧不足で5人が亡くなり、27日後に救出されたのは1人だけだった。


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ライフラフトは扱い方を誤ると大変危険な事態に陥るということの実例として、「たか」の海難についても触れてみたい。「たか」の場合はこのナイフを探そうと艤装品袋を開けていた時に転覆してしまい、艤装品のほとんどを流失させてしまった。

 

その詳細を「たった一人の生還」(佐野三治著)を元に書くと次のようになる。「たか」は夜間に転覆して完全に船底を上にしたまま1時間以上復元せず、キャビン内にいた4人が羽目板をはずして海中を泳ぎ脱出した。その後ようやく復元したがディスマストしていたうえに水船状態で、しかも羽目板を流失させてしまったために波がキャビン内に打ち込む状態で艇長はヨットを放棄することに決めた。本来ライフラフトは船外の海上で開くものだが、波が大きく流してしまうことになるかもしれないことと、クルー全員が疲労困憊していたことからバウデッキでライフラフトを開くように指示したという。

 

全員がラフトの中に入った時に、ラフトのシーアンカーが折れたマストに引っかかっているのに気が付いた。誰かがそれを切るためにナイフを探そうと慌てて艤装品袋を開けてしまった。そこを大波に襲われてライフラフトが海に落ちて転覆し、艤装品のほとんどを流失させてしまった。シーアンカーはクルーの一人がデッキに降りて手ではずして戻って来ていたのだが、それを待ちきれずに慌てて袋を開けてしまっていたのだ。

この舫い綱を切るためのナイフは、多くのライフラフトの場合、壁面のわかりやすい所に収納してある。ただし日本でヨットによく搭載されている藤倉製5人乗りの場合はライフラフトを包んでいる袋の表側の収納ポケットの中に入っている。前述したように海上で膨張したあと、この袋は舫い綱に繫がって海に浮かんでいるから、引き寄せて取り出さないといけない。こんなことは事前に聞いていないとまったくわからないことだ。私にしても「たか」遭難時の詳細を知ってから自分のライフラフトのナイフはどこにあるのか知ろうとして説明書を読んでみると、「回収した格納袋の外側にナイフが取付けられていますので、取り出してもやい綱を切断して下さい。」とは書いてあったものの、格納袋とは何のことかわからなかった。その頃はコンテナの中に直接ライフラフトが折りたたんで収納されているものと思っていて、格納袋でさらに包まれているとは知らなかったのだ。それで検査に立ち会った時に実際に見て、ようやく理解できたのだった。いずれにしても、どんなライフラフトでも艤装品袋の中にナイフが入っているということはありえない。舫い綱を切るために最初に必要になる可能性が高いからだ。しかし事前にそういう知識がなければ、荒れた海でしかも夜間に脱出することになれば、混乱の中誰でも慌てて艤装品袋を開いてしまうことはあり得ることだ。


話しが横道にずれるが、写真をよく見てもらえばわかるようにこのナイフはプラスティックの柄にひびが入っていた。一回も使っていないのにこんな状態になるものを、ライフラフトの艤装品として入れていたメーカーにはあきれる。もちろん、この検査の時に新しいナイフと交換した。こういうこともあるから、ライフラフトを持っている人は検査の時にぜひ立ち合うことをお勧めしたい。


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テレビ番組「辛坊治郎ヨット遭難の全真相」では、ライフラフトに乗り移った2人が寒さに震えるシーンがあった。6月とは言え外洋の吹きっさらしの海上で、しかもヨットから着替えを持ち出さなかった。岩本氏がキャビンから「濡れると寒いから着替えは?」と言ったのだが、一刻も早くライフラフトへと気持ちが焦っていた辛坊氏は「とりあえず上がって来て」と答えただけだった。脱出することで頭が一杯で余裕がなかったのだろう。

 

たとえ着替えを持ち出したとしても、乗り移る時に濡らしてしまうかもしれない。そうした時に使えるのが、この銀紙製の保温具だ。これが艤装品袋に入っているのは、さきほどの写真にも写っていた。ペラペラのものではあるが、これで体を包むようにしているとかなり暖かい。

艤装品の中にはレーダーリフレクターもある。組み立ててライフラフトの外側、なるべく高い所にかけておけばレーダーに捉えてもらえる可能性が少しは高くなるかもしれないが、波が高いとレーダー画面では区別がつきにくいかもしれない。

また火箭や信号紅炎も入っている。四国沖で転覆した時の話しをオージーの友人から聞いたことがあるが、貨物船が近づいて来た時にパラシュートフレアという火箭に似たものを打ち上げたが、気が付いてくれたのは最後の7本目だったという。高いブリッジにいても時々前を見るだけの乗組員の視界には入りにくかったのかもしれない。本数に限りがあるから、船や飛行機の進行方向を見ながらタイミングよく使わないと見つけてもらうことは難しいのかもしれない。こういう点では、VHFやイパーブの方が発見の可能性が高いと思うが、ともあれやれるだけのことは遭難者の方でも行って、少しでも捜索に協力することが必要になると思う。番組では海自の飛行艇US-2がなかなかライフラフトを見つけられなかったとのコメントがあり、日没直前になってようやく発見し着水したとのことだった。


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ライフラフトはJCI(日本小型船検査機構)の検査があるから積んでいるだけで、実際に使うことはないさと思っているオーナーが多いことと思う。ところが事故は意表を突く形で突然に起こる。エオラスの場合も、画面をよく見ていたらクジラの方からヨットに近づいてきたように見えた。クジラにしてみたら、見たことないやつがいるからちょっとさわってやるかくらいの感じだったのかもしれない。

使う段になると、けっこうライフラフトの扱い方には順番通りに作業しなければならない項目と、事前に知っておかなければならないことが意外に多いことが理解していただけただろうか。かく言う私も今回改めて自分のライフラフトを再度調べる中で発見があった。それはこの写真のライフラフトの屋根にV字型に取り付けられたものの目的だった。これは言ってみれば雨どいで、雨がこの部分を伝わって流れて来る所に蓋つきの穴が開いていて、内側から雨水を取ることができる仕組みなのだ。

またフイゴが入っていて気室の空気が減った時に使うことは知っていたが、床の中心にも独立した気室があってそこへ空気を入れてやるためにも使うものだという。このことは説明書に書かれておらず、これまで知らなかった。おそらく屋根の支柱の下部を固定するのと、居住性を少しでもよくするために考えられたものだろう。


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こうした細かいことはライフラフトの説明書には書いてないし、誰も教えてはくれない。JCIの小型船検査官もライフラフト検査所の検査済み証明書がありさえすれば、外側からちょっと見るだけで終わりであり使い方は教えてくれない。たぶん知らないからだろうが‥。まさに検査のための検査、というやつである。

日本でライフラフトの使い方講習が行われるのは、漁師を対象にした漁協主催のものが年に数回あるのと、外洋ヨットレースを主催する団体がレース直前に行うものが稀にあるだけだ。このブログを書いている今日5月2日に小笠原レースが父島からスタートしたが、数日前に実際にライフラフトを使う講習会が父島二見港で行われたようだ。

ライフラフトを搭載しているヨットのオーナーやスキッパー、クルーは、ライフラフトの定期点検や中間検査の時にぜひとも検査所へ行って中身を確認しておくべきだと思う。

写真は救難食糧として艤装品に入っているビスケットだ。この一枚が確か一人の一日分だったと思う。これにも賞味期限があり、検査の時黙っていれば古いものは捨てられてしまう。検査場からもらってきて友人5人くらいに試食してもらったことがある。4人はほんの少し齧っただけでウヘーという感じになってそれ以上は食べなかった。一人だけ20代の大食漢がいて、彼だけはパクパクと全部食べてしまい、これには驚いた。味は強いて言えばカロリーメイトに似ているが、石鹸のような味と言った方が近いかもしれない。おいしいと一度にたくさん食べてしまうから、口当たりが悪い方がいいという考え方なのかもしれない。


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辛坊、岩本両氏を救出した海自飛行艇SU-2だが、これはぼくが父島二見港へ入港した時に偶然撮った機体。エンジン音が大きくなり海上を走り始めたと思ったらわずか数百メートルであっという間に飛び上がった。機体重量にくらべてかなり余裕のあるエンジンを搭載しているのだろう。

 

この時の小笠原航海は往路は問題なかったが、帰路で発達した低気圧の影響でさらくの操舵機能が破壊されてしまった。場所は串本沖約250マイルで、エマージェンシーティラーを使って2日間くらい機帆走すれば種子島へ着ける距離ではあったが、大事を取って海上保安部へイリジウムで連絡し曳航を依頼した。そんな外洋だったにもかかわらず、巡視船が他の仕事で近くを航海中で約5時間で来てくれ、3日間曳航してもらって串本に着くことができた。この時は沈没する心配はまったくなく、ライフラフトの使用は考える必要がなかった。あとで思ったことは、小笠原を出航する時に低気圧が日本列島に近づきつつあることはわかっていたから、出航を見合わせておけばよかったことと、予想外の荒天になった中で走り続けることをせずにヒーブツ―で凌ぐこともできただろうということだった。ヨットと艤装品の性能と耐候性、自分の体力と能力を見極めることの大切さを知った。そのうえで航海計画や出航の是非を慎重に調べて考え、事故に遭遇するリスクを少しでも低くすることに努めるようにする。

 

しかし、いくらそうしたからといっても事故から完璧に免れることはできないだろう。外洋での突然の事故で沈没するかもと思った時でも、ライフラフトはあくまでも最後の手段であり、まず船を救うことに全力を注げ、と言われている。ライフラフトはちっぽけなゴムボートに過ぎない。乗り移るのには、かなりの決意が必要だ。しかしリスクが大きいからといって船が間違いなく沈むとなったら乗り移らざるを得ない。

 

そういう場合、海は荒れていることが多いし夜間かもしれない。クルーの力量はどうか、艇長がきちんとした指示が出せるか。エオラスではいくつかのミスはあったが、良かったのは衛星電話とGPSを持って乗り移ったことだった。だが衛星電話では救助に来てくれる航空機や船舶と直接の連絡を取りにくいだろう。まずお互いの電話番号を知らないと連絡が取れない。さらにイリジウム携帯に附属の棒型アンテナでは通信が不安定だし、ずっと待ち受けにしておけばバッテリーが消費される。それを考えればイパーブのスイッチをオンにしてライフラフトに持ち込むことと、VHFハンディ無線機がやはり必要だ。

 

ライフラフトを購入し船に搭載したとしても、船検を通すために載せただけで関心もなくセーリングしていても眼中になし、というヨットがあるのかもしれない。エオラスの場合は借りたヨットだったので、航海に向けた直接的な準備に追われて余裕がなく、関心が向かなかったという面があったのか。その割にはわざわざ福島県小名浜港まで行って太平洋へ出航した。

 

ライフラフトの展開方法や艤装品にどんなものがあるのかを今の日本では誰も教えてくれないと言っても言い過ぎではない。普段わからないものを、大荒れの夜の海でサァ使えと言われても誰にもできるはずがない。せっかくの高価なものをブラックボックスならぬホワイトボックスにしないためには、自分で知ろうと努力するしかない。講習会もほとんど行われないから、定期検査の時に検査所へ行って中身と構造を見学させてもらい、わからないことは検査する人に質問するのが一番手っ取り早い方法だ。これまでに起きた事故から生還した人たちの貴重な体験は、「たった一人の生還」のように出版されてもいるから読めば必ず役に立つ。要は関心を持つことだ。オーナー、スキッパーだけではなく、クルーも時々はライフラフトのことを話題にしよう。

 

2017年05月05日:ライフラフトSalaku

Comments

山崎 才次さん:2017年05月13日

非常に参考になりました。
さすが我が先生と思う内容でした。
ありがとうございました!!

Salakuさん:2017年05月15日

お久しぶりです。S港まで航海されましたか。自分のスキル、ヨットの装備、天候がよしとなったらどんどんトライしてください。

Hay ashi.さん:2017年07月18日

Sankouninariarigatougozaimasita

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