できるクルー(Competent Crew)

Competent Crewはイギリスで発売されている本で、ヨットにこれから乗ろうという初心者のために書かれている。Royal Yachting Association ではビギナーからベテランまで5段階の講習をおこなっており、最も初歩の講習の名称が Competent Crewである。この本は、その講習を受けようとする人たちが参考書として利用できるよう書かれている。購入したきっかけは巻末に用語集が掲載されているからだったが、ざっと読んでみると初心者向けというわりには内容が充実しており、ヨットの本場イギリスではクルーに何が求められているかがわかる。日本の常識ではヨットの艇長=スキッパーに何でもまかせて、あとはお客さんだから乗っているだけでいいということになるから、なぜこんな本をわざわざ読まなければならないのかと思われる人も多いだろう。この違いはヨットがスポーツとして人々に認められているかどうか、というところに根本的な原因があると思う。イギリスでは、ヨットがどんなものとしてとらえられているかを日本の皆さんにも知ってもらう小さなきっかけにはなるかと思い、下手な訳文であることを承知のうえで紹介することにした。以下は重要と思う箇所を部分的に翻訳したものであり、省略している箇所も多いことを了解のうえ読んでいただきたい。 

                          
     目次
前書き

第1部
1  新しい用語
2  ヨット各部分の名称と用語
3  出航前の用意と準備
4  セーリングの準備
5  セーリングする
6  港に入る
7  アンカリング
8  荒天への対処
9  特殊な操船

第2部
1  ロープの種類と使い方
2  天気の予測
3  コンパスを使う航法
4  航路標識、灯台
5  海上衝突予防法の基礎
6  国旗の掲げ方と礼儀
7  エンジン
8  落水者や火災への対処と負傷者の救急方法、および救難信号

第3部
問題集

用語集


前書き
海の上では、まず安全に感じることが大きな自信をもたらし、つぎにその自信が大きな楽しみ、快適さへとつながります。そして、その楽しみや快適さを得ることこそがセーリングする目的なのです。この本はヨットにはまったくの初心者向けにかかれています。クルーは自分が何をすればいいのかを知りたいのと同時に、スキッパーやナビゲーターが何をしているのかも知りたいものです。ですから、航海術や気象、それに海上衝突予防法などについても簡単にふれています。
 陸から遠く離れた海上で天候が悪化したり、スキッパーにアクシデントがおきたりした時、その時こそ「できるクルー」の存在が必要になります。あなたはほかの人達と協力してヨットを港まで航海させる自信がありますか。この本を読んでその自信をつけてください。

第1部
1 新しい用語
ヨットの上で使われる言葉は、セーリング経験がない人にとっては理解できないものが多いものです。小さな船でセーリングを楽しむためには自信が必要で、自信を得るには安心感をもつことが最も重要な手段です。その安心感を得るには、船に備え付けられている物が何のために使われるのかということやその使用法、そして船の責任者であるスキッパーから与えられる指示を理解できなければなりません。船を航海させるには、知識や経験が豊富な一人の人が決定の責任をもってあたったほうがベターです。クルー全員はスキッパーの権威を尊重しなければなりません。事故や緊急事態がおきるのを避けるには訓練が必要ですが、その訓練は軍隊式のものである必要はなく、基礎的な理解と尊重の精神を持ったものであればいいのです。 このためにはクルー全員が意思を伝え合うことができなければならず、それには用語の理解が不可欠です。

2 ヨット各部分の用語
(スループ、カッターなどヨットの種類について図で説明)
(ヨットの艤装品の取付け位置と名称について図で説明)
(ランニングリギン、スタンディングリギンなどの取付け位置と名称を図で説明)
(スターボードサイド、ポートサイドなど船からの方向を指示する用語を図で説明)

3 出港前の用意と準備
船内は狭いのでクルー一人に用意されるスペースは限られています。セーリング用衣服と陸上での衣服を1セットだけ入れたソフトバックを保管できるスペースがあるだけだと思ってください。コーヒー、砂糖からビルジポンプまで、すべての物の収納場所を全員が知っていることが大事です。
海上の風は大変に冷たいので、あなたが必要と考える衣類の枚数の倍の衣類を着たほうがいいし、その上には防水のオイルスキンを着る様にします。厚い靴下や手袋、それに帽子、さらに防水で滑らないブーツや靴を用意します。一方、カンカン照りのもとではサングラスや日焼け止めを忘れないように。
<個人用安全備品> 荒天時のナイトセーリングではデッキにいる全員がハーネスを着用して、頑丈な所に繋ぎ留めておかなければなりません。ガードレイルやスタンディングリギンに留めてはいけません。それぞれのクルーには専用のハーネスやライフジャケットを用意して、必要な時にはサイズがあったものをすぐに着用できるようにしておくことが必要です。個人の安全備品には鋭いナイフを入れておき、非常時にロープをすぐに切れるよう準備しておくことも必要です。

<出航準備>
下は出航前のチェックリストです。スキッパーがチェックすべきものではありますが、クルーもどんなことが必要とされているのか、リストを見てしっかりと理解しておくことが必要です。(以下24項目のリストが掲載されているが、ここではその一部を紹介する)
すべての用具が転げ出ないように片づけられているか。エンジンのスタート準備はできているか、冷却水のコックは開いているか。(中略)クルーはライフラフトの使い方、落水者救助の方法、発煙筒などの使用法、無線による救難通信の方法など緊急事態における対処のしかたについて説明を受けたか。(中略)ハーネス着用の際の留める場所について指示を受けたか。天気予報は取ったか。(中略)消火器は使用できるか。国旗やクラブ旗は掲げたか。もやい綱をはずす用意はできたか。

4 セーリングの準備
クルーがヨットに乗って最初にする作業の一つがセールを準備することです。ヨットが停泊している場所から離れる前に、セールを即座にあげられるよう準備しておくべきです。
<メインセール> セールをまさにあげようとする時まで、ハリヤードはピークに繋いでおかないほうがベターです。それはハリヤードにテンションがかかっていないと、特に突風が吹くときですが、スプレッダーにからんでしまうことがあるからです。それでもハリヤードをセールに繋いでおきたい場合は、マストウィンチかクリートにハリヤードを回して留めておけばテンションはかけられるしセールも下へおさえることができます。
<ヘッドセール> (メインと同様にジブハリヤードにテンションがかかっているかどうかに注意することなどが書かれている。ジブファーラーについては書かれていない。)
<エンジン> 停泊場所を離れる時にエンジンを使用することは賢明なことです。エンジンをかける前にギヤがニュートラルに入っているか、冷却水のシーコックが開いているかを確認します。エンジンを回し始めたらすぐに冷却水の排水口から水が出ているかどうかを確認します。ディーゼルエンジンは長いアイドリング運転を嫌います。
ガソリンエンジンは少しアイドリングしたほうがベターです。
<停泊場所を離れるための舫いロープの準備>
(潮流や風がある場合とない場合について書いてある。スプリングラインを係船柱に回し、一方の端を船のクリートに止めてもう一方をクルーが持ち
船を動かしてバウあるいはスターンを停泊場所から離す方法などが紹介してある。)
<舫いロープとフェンダーをしまう>
船が停泊場所を離れたら、すぐに舫いロープとフェンダーをしまわなければなりません。ロープはしっかりとコイルしてからしまいます。ロープがバラバラになったまま転がっているようでは単にだらしないというだけではなく、海中にロープが落ちてプロペラにからみつく事故をひきおこす可能性もあり危険です。
<セールをあげる>
セールをあげる時には、クルーの一人が舵を取るように言われるかもしれません。風に向かってゆっくり走ったほうが、よりセールをあげやすいでしょう。また、クルー全員がまわりの船の動きによく注意をはらうことも重要です。
<メインセール>
メインハリヤードを停泊していた時に留めてあった所からはずし、ねじれていないか確かめてからメインセールのピークに留めます。セールを巻いているショックコードなどを解きます。船首を風に向けます。キッキングストラップとメインシートをゆるめブームをフリーの状態にします。メインセールをウィンチに巻いてセールをあげますが、見上げながら何かが引っ掛かったりなどしないか注意しながら行います。ウィンチハンドルはセールアップの最後の段階で使います。ハンドルは海に落とさないよう注意し、使い終わったらしまうのを忘れないよう。セールアップが終わったら、ラフが張っているか、引きすぎではないかをチェックします。あまったハリヤードは巻いてクリートに掛けておきます。セールを急に降ろさなければならなくなった場合に備えて、ハリヤードをクリートに捻り止め(locking turn)してはいけません。トッピングリフトを緩めてキッキングストラップを締めます。そしてメインシートをブームが動かないように引き込んでおきます。
<ヘッドセール>
このセールをあげる時には船首を風に向ける必要はありません。メインセールの時と同様にウィンチを使ってセールをあげます。その際には指をジブシートとウィンチの間に挟まないよう気をつけてください。あげ終えたあと、ウィンチハンドルとセールタイをしまうことを忘れないようにしてください。
<ログ(航海日誌)>
ログの記入は公式にはナビゲーターの責任ですが、すべてのクルーはその項目や記入方法を知っておくべきです。(ログの項目について、また時間やコースの記入方法についての説明がある)
<見張り>
小型船ではヘルムスマン(舵を取っている人)が見張りも担当するのが普通ですが、セールによる死角があるのでデッキにいる全員が常にまわりの状況に気をつけている必要があります。

5 セーリングする
(セールトリム、タック、ジャイブについて書かれているが省略)

6 港に入る
<アプローチ>
初めての港に入る時には、ナビゲータークルーに対して陸の目印を見たり、方位を調べたり、水深を測ったり、また航路標識や灯光の確認をしたりするよう指示するでしょう。エンジン故障やプロペラに何かがからまる可能性もあるので注意しながら、アンカーやフェンダーの用意を始めます。横付けできない港なら、ブイやパイルに舫う用意をしてディンギーも用意すべきです。
<セールを降ろす>
スキッパーがどちらのセールを最初に降ろすかを決めます。これはいろんな要素に左右されますが、スキッパーはヨットを最適の状態で港へ入れようと考えます。
メインセール
ヨットを風に立ててから降ろします。メインシートとキッキングストラップを解放しトッピングリフトにテンションをかけてからメインセールを降ろします。降ろしたらハリヤードをはずして停泊中のポジションに留め、もう一方のエンドを引いて弛みを取ってからクリートします。あまったハリヤードはコイルしてからクリートに掛けておきます。メインシートを引き込んでからキッキングストラップを締めます。

{以下、不定期にですが順次掲載を続けます}