威圧的な臨検についての議論をRYAが公開
RYAのヨットマスターを取得したのは4年前ですが、最近になって毎月ウェッブ版ニュースが送られてくるようになりました。その中で興味を惹かれる記事を要約して紹介したいと思います。
第一回目は、UK Borders Agency(UKBA)英国内務省国境局によるヨットに対する高圧的、威圧的な臨検が非常に不評で、RYAが国境局に抗議し、その後協議が続いているという記事です。
「RYA、国境局と臨検について協議中」
昨年、RYAが政府に対して国境局の監視船が行う高圧的な臨検に対して抗議をしたところ、RYA会員のヨットやモーターボートのオーナーから、それを支持する数多くの手紙が寄せられた。
RYA会員の意見は真っ二つに分かれた。監視船の麻薬密売人、テロリスト、不法入国者に対する取り締まりは確かに国境の安全を保っているという意見がある一方で、あのやり方ではまるで警察国家だ、プライバシーに対する無礼極まりない侵害だという意見もある。
RYAが知りたいのは、沿岸を走っているヨットになぜ監視船乗組員たちが怒鳴りながら乗り込んで来て、断りもなしに船内に入って来るのかということだ。乗り込まれた方は、身に覚えのない罪を追及されているような気分になってしまう。
抗議に対し、国境局本庁は次のような回答を送って来た。
「監視船乗組員たちが達成している麻薬、不法移民の阻止とテロリスト逮捕の仕事は賞賛に値することを強調したい。第一に、監視船が摘発した麻薬の80%はヨットからのものである。密輸業者は、しばしば外洋で母船からヨットへ麻薬を移して港へ運ぶので、沿岸のヨットを臨検している。第二に、監視船乗組員がヨットに仕掛けられた爆弾によって麻薬もろとも吹き飛ばされることがある。こうなると証拠も沈んでしまうから、監視船乗組員はヨットに乗り込むと同時に船内へ突入する戦術を取っているのだ。」
RYAは国境局に対して、このままでは国境局にとって重要な情報源となり得るヨッティングコミュニティを、いたずらに遠ざけてしまうことになると説明した。国境局側もプレジャーヨット・ボートに乗る人たちからの支持を望んでいるのは明確で、正当な理由のある抗議なら聞く耳を持っていると強調した。
RYAは、今後も国境局との定期的な協議を続けていくので、国境局監視船による臨検についてどんな情報でもいいからお寄せください。」
以上がRYAの記事の概略ですが、これだけ読むとイギリスのまわりの海は大変な状態になっているような印象を受けます。イギリスのヨットの数はものすごく多く、不謹慎ながら密輸業者はいいところに目をつけたとも思えるのですが、監視船乗組員にとってはヨット臨検が生死をかけた任務になっているということのようです。
しかし、セーリング中に監視船乗組員が突然乗り込んできて、どけどけとか叫びながら船内まで突入されたら、これはたまらないでしょう。家族連れでセーリングしているヨットも多いお国柄です。
国境局UKBAがどういう官庁なのか調べてみると、税関と入管が合体して2年前にできた新しい官庁でした。国境局としては、問題となっている船内突入戦術を「ハイ、それではやめます」とは言えません。RYAは、まだ続くようなら協議の中で再度抗議をするという構えですが、両者ともこれ以上問題が大きくならないようにしたいのが本音でしょう。
RYAは、歴史のある準官庁とも言うべき存在です。救難を専門にする海事沿岸警備庁MCA、その上部の沿岸警備隊とは密接な関係にあり、さらに海軍とも近い関係にあります。これはRYAの試験官の多くが海軍退役将校であることからも知れます。UKBAとしても、こうした組織からの抗議を無視するわけにはいかないから、どんな対応をしていくのでしょうか。
ヨット乗りからの苦情、不満をきちんと取り上げて、相手が巨大な官庁であっても堂々と渡り合う姿勢は、さすがRYAだと思います。RYAニュースはコチラ。
(掲載した写真は、2001年にソレント周辺やカウズで撮影したもので、今回のRYAの記事とは無関係。HM CUSTOMSと書かれた警備艇は、Wikipedia UK Border Agency より。)

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