クレーンなしで船底塗装
海岸にポツンと置かれている鉄の枠。昔は白かったのでしょうが、かなり錆びています。実はこれ、船台なんであります。ここは五島列島の久賀島。大潮の時には海面が3m以上、上下します。
これから「上架」するヨットは、左の方に小さく見えていますが、ブルーウオーター24です。
満潮になる前に漁船を使って船台を引っ張り、深い方へ移動しておきます。満潮になった時にヨットをちょうど載せられる深さまで移動させておくのがコツですが、かなりの熟練が必要なようです。写真はヨットがちょうど船台の真上に来たところで、ここで潮が引き始めるのを待つわけです。
潮が引くと、こうなります。オン ザ センダイ!
次の満潮までに終わらせないといけないので、一息ついている時間はありません。スクレーパーで汚れを落としタワシで洗ってから、乾くのを待つ間にマスキングをします。
いよいよ船底塗装です。このヨットは来夢(ライム)、オーナーは漁師の小島満さんです。塗料は漁船用のものを使うそうです。ヨット用のものでなくてもいいのかって?漁師のヨットだから漁船用でいいのでは?
塗り終えて完成、終了しました。小島さん、「メリットはとにかくお金がかからない。船底塗料代だけです。デメリット 1 海況に左右されるため、なかなかチャンスに恵まれない。2 時間的にかなりハードです。4時間から長くても5時間で作業を終えないと潮が満ちてきます。」
やっぱり、楽はできないですね。ところでこちらはイギリスはソレント海峡に面したマリーナで見かけた船底塗装のようすです。船台なしです。もともとこのパイルが船底塗装のためにあるものかどうか知りません。このヨットのようにロングキールではなくても、パイルにうまくロープをかけ、前後のハルを材木で支えればできるかもしれません。
イギリスでは岸壁から離れたパイルに舫うのは普通のことで、上陸したい時はVHFでハーバータクシーを呼べばすぐに来てくれます。ハーバータクシーと言っても、日本で言えば伝馬船のような小船です。日本では総務省によるVHFの理不尽な規制や、ヨットの数が少ないので成り立たない仕事ですが、イギリスのマリーナではサービスとして普通におこなわれています。
舫いロープをかけるパイルが岸壁から離れたところにあるのは、ヨットの数がものすごく多く、すべてのヨットにポンツーンを用意できないからです。ぼくが受けた印象では、日本の漁船とヨットの数の比率が仮に1000対1だとしたら、ちょうどその逆がイギリスの比率になる、それくらいヨットが多いです。それも走っているヨットが。だから上架の順番待ちも大変なはず、それなら干潮の時にやっちゃえ、となるのかもしれませんが、大きいヨットをするのはちょっとコワイです。
以前、長崎に24フィートくらいのヨットで来たフランス人が、キールが下駄のように2枚あるんだと言うので、最初は冗談言ってるんだろうと思いました。でも、こうやって本当にあるんだよね、下駄キール。これも9年前にソレントで。
干満差が大きいところに係留しても、これなら喫水を心配する必要なし。船底塗装にはクレーンどころか、船台も必要ありません。
(このブログは、五島灘ヨットクラブ会報第6号に掲載した小島さんの文と写真を、本人の了解を得て再構成しました。)

Comments
CPさん:2010年07月03日
さらくさんの記事を見てるとびっくりすることばかりです。
野本さんの「スピンナヤーン」の本の写真では見たことありますが、実際にやってる人が日本にもいるんですね。下駄キールは驚き。フランス人って、天才的なオバカさんと昔から思っていますが、改めて思い知らされました。
日本海・北陸では、干満の差がほとんど無いので、考えられませんね。
Salakuさん:2010年07月03日
CPさん:2010年07月04日
じみーさん:2010年07月06日
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